自分に恋した少年
はるが きて
めが さめて
くまさん ぼんやり かんがえた
さいているのは たんぽぽだが
ええと ぼくは だれだっけ
だれだっけ
はるが きて
めが さめて
くまさん ぼんやり かわに きた
みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな
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こんばんは。
これを読んで下さっている、心優しい(もしくは物好きな)そこのあなた、こんばんは。
あなたは、上の詩を見たことはありますか。
そう、まど・みちおの《くまさん》という作品です。
私は、小学生の頃に教科書に載っていて、詩の意味もよく知らぬまま音読させられていた記憶があります。
今でこそ自己肯定感がテーマになっているのかな、と何となく思います。
そう、「くまさん」は、自分のことが大好きなのです。
…自分のことが大好き、と言えば、こちら。
6月に、国立西洋美術館のカラバッジョ展に行ってきました。(カラバッジョ好きです。バロック時代の美術が好きです。)
この絵の主役、ナルキッソス(ナルシス)も、自分のことが大好きなようです。
でも、、、
先ほどの寝ぼけたくまさんとは、、、
何かが違うと思いませんか。
そう、ナルキッソスは、自分のことが大好き、というより自分に恋しちゃったのです。
ほら、一生懸命に水に映る自分の顔を見ようとする表情に、どきっとしませんか。
叶わないと分かっている相手(自分!!!)に恋してしまった、
やるせなさ、切なさ、悩ましい気持ちが、
赤く染まった頬や、筋ばった首筋、水に映った自分になんとか触れようとする左手に、よく表れています。
たぶん、写真じゃなくて本物を見たら、その切なさの波に、あなたも飲み込まれるでしょう。
カラバッジョの絵を見ていると、
額縁という窓から絵の世界を見ている、というよりは、
絵の中の世界がここにいる私の周りにも広がっているような錯覚を覚えます。
それくらい、人の感情がびしばしと伝わってくる絵ばかりでした。光の当て方や影の付け方も大好きなのです。
(でも、今回のような、「自分に恋しちゃった!」というクレイジーな絵ばかりではないです、念のため!笑
でも、カラバッジョ自身はとてもクレイジーな人らしいです。気になる方はカラバッジョで検索)
そして、そんなナルキッソスに恋してしまったわたしは、、、、
私の部屋の窓辺
このナルキッソス、ミュージアムショップで買いました。お値段1080円也。
泉に映る自分ばかり見つめている彼が、私の方も見てくれる日は、いつか来るのでしょうか。
おわり